さいたま市大宮区の「堀の内整形外科内科クリニック」です。
当院には、お子様が急に腕を動かさなくなり、激しく泣きながら来院されるケースがよくあります。特に未就学のお子様の場合、その多くが「肘内障(ちゅうないしょう)」という、小児特有の肘の怪我です。
お子様が突然痛がりだすと、保護者の方はパニックになってしまうかもしれません。
しかし、肘内障は正しく対処すれば比較的簡単に治る怪我です。
本ブログでは、この肘内障について、どのような症状で起こるのか、なぜ子どもに多いのか、そして当院で行う治療法や、ご家庭での注意点までを詳しく解説します。
1. 肘内障とは?なぜ子どもに起こるのか
📌 肘内障の概要:「肘が抜けた」状態
肘内障は、一般的に「肘が抜けた」「肘が外れた」と呼ばれることの多い状態ですが、医学的には「橈骨頭(とうこつとう)の亜脱臼(あだっきゅう)」、または「輪状靭帯(りんじょうじんたい)の嵌頓(かんとん)」と呼ばれるものです。
肘の関節は、主に上腕骨(太い骨)、尺骨、橈骨(細い骨)の3本の骨で構成されています。
このうち、腕を回したりねじったりする動きを担う橈骨の先端(橈骨頭)は、輪状靭帯というバンド状の靭帯によってしっかりと固定されています。
しかし、肘内障が起こると、この橈骨頭が輪状靭帯からわずかに外れ、靭帯の一部が関節の間に挟まってしまう状態になります。
👧 5歳以下の未就学児に多発する理由
肘内障は、歩き始めから5歳くらいまでの未就学児に非常に多く発生します。
これは、子どもの骨格が大人と比べて未発達であるためです。
- 輪状靭帯が緩い、または不安定: 子どもの骨はまだ発達途上であり、橈骨の先端にあるくびれ(橈骨頭)が浅い、または、輪状靭帯自体が大人ほど強固に骨に付着していないため、外力が加わると簡単に外れやすくなっています。
- 6歳以降は起こりにくくなる: お子様の成長に伴い、橈骨頭のくびれが深くなり、輪状靭帯が強固に付着することで安定するため、小学校に入学する頃(6歳以降)になると、肘内障はほとんど起こらなくなります。
🤕 肘内障が起こりやすい典型的なシチュエーション
肘内障の発生には、「腕を急に引っ張る動作」が深く関わっています。
最も典型的な例は以下の通りです。
- 手を繋いでいる時に急に引っ張られたとき: 子どもが転びそうになった際、保護者の方がとっさに手や腕を強く引っ張ったとき。
- 子どもを無理に引き寄せたとき: 急いでいる時や、危険な場所から遠ざけるために、手を掴んで体を引き上げたとき。
- 子どもを両手で持って振り回したとき: 遊びの最中に、子どもの手を掴んで揺らしたり、ぶら下げたりしたとき。
ただし、原因がはっきりしないこともあります。
子どもが遊んでいる最中に、転んで手をついた、肘をついた、寝返りをうったなど、些細なきっかけで起こることもあります。
2. 肘内障の主な症状と受診の目安
肘内障の症状は非常に特徴的です。
保護者の方がこれらの症状を知っておくことは、早期発見と速やかな受診に繋がります。
🚨 典型的な症状
- 突然の激しい泣き: 外力が加わった瞬間、子どもは強い痛みを感じて激しく泣き出します。
- 腕をだらんと下げて動かさない: 肘をわずかに曲げ、前腕が内側を向いた(回内位)の状態で、腕をだらりと下げたまま動かそうとしなくなります。
- 「痛い」「使えない」と訴える: 特に腕を挙げようとしたり、手首をねじろうとしたりすると強い痛みを訴えます。
- 見た目の変化はほとんどない: 骨折や捻挫と異なり、肘の周辺に腫れや赤み、変形といった見た目の変化はほとんど見られません。親御様が「どこが悪いのか分からない」と戸惑う理由の一つです。
- 手首の痛みと勘違いしやすい: 子どもが腕全体をかばう仕草をするため、親御様が手首や肩の怪我と勘違いすることがよくあります。しかし、痛みを感じているのは肘の関節です。
💡 受診の目安と注意点
上記のような症状が見られた場合、肘内障を強く疑いますが、
まずは整形外科クリニックを受診してください。
- 骨折の可能性を除外するため: 肘内障によく似た症状を示すものに、肘や手首の小さな骨折、鎖骨骨折などがあります。
特に、転倒など原因がはっきりしない場合は、骨折の可能性も念頭に置く必要があります。
当院では、問診と診察に加え、必要に応じてレントゲン検査を行い、骨折がないことを確認した上で治療を行います。
- 時間が経つと痛みが落ち着くことも: 肘内障は、時間が経つと痛みが落ち着き、子どもが泣き止むことがあります。
しかし、腕を完全に元通りに使っているわけではありません。
無理に動かそうとせず、安静を保ったまま医療機関を受診してください。
3. 肘内障の治療:徒手整復(とくしゅせいふく)
肘内障の治療は、麻酔をかけずに外来で簡単に行える「徒手整復」が基本です。
👨⚕️ 整復の手技
徒手整復とは、医師が手で操作して、ずれてしまった橈骨頭と挟まった輪状靭帯を元の位置に戻す手技です。
手技にはいくつかの方法がありますが、当院ではお子様の状態をよく診察し、最も負担の少ない方法を選択しています。
一般的な整復手技では、お子様の肘を曲げた状態で、前腕をゆっくりと回す動作を加えます。
- 整復の成功: 整復が成功すると、肘の外側の橈骨頭を押さえている医師の指に、「コキッ」または「クリッ」というわずかな感覚が伝わります(整復感)。
- 症状の改善: 整復が完了すると、挟まっていた靭帯が解放され、子どもはすぐに痛みがなくなり、それまで使わなかった腕を、泣き止んで急に使い始めます。
多くの場合、整復後すぐに腕を挙げられるようになり、この劇的な改善が見られれば治療は成功です。
🏠 整復後の対応と注意点
- 固定は不要: 整復が成功した場合、ギプスなどの固定は必要ありません。子どもがすぐに腕を使い始めるので、そのまま日常生活を送っていただいて問題ありません。
- 再受診の必要性: ほとんどのケースで再診は不要ですが、整復後にまた腕を動かさなくなった(再発の可能性)、あるいは肘や手首が腫れてきた(骨折の合併の可能性)場合は、速やかに当院にご連絡ください。
4. 肘内障の再発予防と保護者の皆様へ
肘内障は一度発症すると、靭帯や軟部組織が緩くなるため、その後しばらくは再発しやすくなります。また、反対側の肘に起こる可能性もあります。
お子様の骨格が安定する6歳頃までは、以下の点に注意し、再発予防に努めましょう。
🙅 予防のために避けるべき行動
- 腕を強く引っ張る行為は絶対に避ける: 子どもを引き寄せたり、抱き上げたりする際は、手や手首を引っ張るのではなく、体ごと抱きかかえるか、脇の下に手を入れて持ち上げるようにしましょう。
- 両手を持って振り回す遊びは避ける: 遊具や親との遊びで、腕に過度な牽引力(引っ張る力)がかからないように注意してください。
🗣️ 保護者の皆様へ
子どもの肘内障は、親御様が原因で起こることが多い怪我です。そのため、「自分のせいだ」とご自身を責めてしまう方もいらっしゃいます。
しかし、肘内障は子どもの成長過程特有のものであり、多くの場合、お子様を危険から守ろうとした結果、不意に起こってしまうものです。
大切なのは、すぐに専門医を受診し、適切な整復を受けることです。
当院では、お子様の不安や痛みを和らげ、迅速かつ的確に整復処置を行います。
肘内障を繰り返してしまうお子様には、再発予防のための具体的なアドバイスも行っておりますので、ご心配な方はいつでもご相談ください。
「あれ?うちの子が腕を動かさない」と感じたら、まずは堀の内整形外科内科クリニックへお電話ください。
