当院は、地域の皆さまが安心して頼れる整形外科・内科クリニックとして、日々さまざまな運動器の疾患や外傷の治療にあたっています。
特に、不意の事故や転倒で起こる「骨折」は、日常生活に大きな影響を与える怪我の一つです。
骨折の治療には、手術が必要なケースもあれば、手術をせずに治す「保存療法」が選択されるケースも多くあります。
保存療法において、最も重要かつ基本的な治療となるのが、患部を安定させて骨の癒合を促す「固定(外固定)」です。
本ブログでは、この骨折治療の要とも言える「固定」の重要性から、体の部位別(特に手関節、手・指、足関節、背骨)に、当院で実際に行っている固定方法と、使用する装具について、詳しくご紹介します。
骨折と診断され、不安を感じている方、固定具の種類や治療期間について知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
1. 骨折治療における「固定」の役割と基本
骨折とは、文字通り骨の連続性が断たれた状態です。
骨が折れると、その部位は激しい痛みや腫れ、変形を伴い、不安定になります。この不安定な状態のままでは、骨はくっつくことができません。
📌 固定の目的
固定治療の主な目的は以下の通りです。
- 骨折部の安定化と癒合促進: 骨折した断端を正しい位置に保持し、動揺を防ぐことで、骨が再生するプロセスである「骨癒合(こつゆごう)」をスムーズに進めます。
- 疼痛の緩和: 不安定な骨折部が動くことによって生じる痛みを軽減します。
- 転位(ずれ)の予防: 骨折時に、あるいは固定中に、骨折部がさらにずれてしまうことを防ぎます。
- 早期機能回復の土台作り: 適切に固定することで、周囲の軟部組織(筋肉、腱、靭帯など)の損傷を最小限に抑え、固定除去後のリハビリテーションをスムーズに行うための土台を作ります。
📝 固定方法の種類
当院で主に使用する固定方法には、大きく分けて以下のものがあります。
- ギプス包帯(キャスト): 石膏やグラスファイバーの包帯を患部に巻き付け、全体を筒状に固める方法。高い固定力が得られますが、皮膚トラブルや血流障害のリスクに注意が必要です。
- ギプス副子(シーネ): ギプス材を半分の形(U字型やL字型など)に成形し、包帯で固定する方法。ギプス包帯よりも着脱や観察が容易で、腫れが強い時期など、状態変化への対応がしやすい利点があります。
- 装具(ブレース/コルセット): オーダーメイドや既製品のサポーター、コルセット、機能的ブレースなど。固定力はギプスに劣りますが、取り外し可能なものが多く、リハビリを早期に導入しやすい、日常生活での利便性が高いといった特徴があります。
- バディテーピング: 手指や足趾など、隣り合う指同士をテープで固定する方法。弱い固定力ですが、隣の指を添え木代わりにして安定させ、同時に隣の指が動くことで関節の拘縮を防ぐ目的もあります。
これらの固定方法は、骨折の部位、骨折型(ヒビ、剥離、粉砕など)、転位の程度、患者さまの年齢や活動性などを総合的に判断して、最適なものを選択・適用します。
2. 骨折部位別の固定方法と治療のポイント
次に、ご要望のあった特定の部位の骨折と、それぞれの固定方法について、当院での治療方針を詳しくご説明します。
1. 手関節・手指の骨折(橈骨遠位端骨折、中手骨・指骨の骨折)
🩺 概要と治療方針
手首や指の骨折は、日常生活において最も機能回復が重要となる部位です。わずかな変形や関節の拘縮が、その後の生活の質(QOL)に大きく影響します。
ここでは、特に頻度が高い橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ、手首の骨折)と手指の骨折について解説します。
▶ 橈骨遠位端骨折(手首の骨折)
- 概要: 転倒し、手をついた際に起こる頻度の高い骨折です。特に高齢の女性では、骨粗しょう症が原因で起こりやすく、骨折部が背側(手の甲側)にずれるコーレス骨折が多く見られます。
- 治療方針: 転位の少ない安定型であれば保存療法(徒手整復後のギプス固定)が選択されます。転位が大きく不安定な場合や整復が困難な場合は、手術療法が検討されます。保存療法では、徒手で骨折部のずれを元に戻した後、再度ずれてこないように強固な外固定を行うことが重要です。
▶ 手指の骨折(中手骨・基節骨・末節骨)
- 概要: ドアに挟む、突き指をする、拳を打ち付ける(ボクサー骨折など)など、外傷の種類が多岐にわたります。
- 治療方針: 治療の最大の目標は、「良好な整復位の維持」と「関節拘縮の予防」です。転位の少ない安定型であれば、保存療法が基本となります。
当院での固定方法
手関節・手指の骨折では、固定と機能回復の両立を図るため、骨折の部位や安定性に応じて、非常に繊細な固定方法を選択します。
- 橈骨遠位端骨折のギプス固定(約4〜6週間):
- 整復後の初期固定: 腫れが強くなる初期は、取り外しや調整がしやすい**長腕または短腕のギプス副子(シーネ)**を使用します。
- 中期固定: 腫れが引いたら、より強固に固定できる**ギプス包帯(キャスト)**に巻き替えることがあります。ギプス固定中は、指の付け根の関節が固まらないように、固定されていない指の付け根の関節(MP関節)を積極的に動かすことが重要です。
- リハビリ: 骨癒合が見られたら、ギプスを除去し、すぐに専門的な手首・指のリハビリテーションを開始します。
- 手指の骨折の副子・テーピング固定(約3〜4週間):
- ギプス・副子による固定: 骨折部位のねじれや傾きを防ぐため、指の付け根(MP関節)を曲げ、指の中間(PIP関節)と先端(DIP関節)をやや曲げた**「機能肢位」**と呼ばれる理想的な位置で固定することが多いです。
- 隣接指とのバディテーピング(Buddy Taping): 転位が少ない安定した骨折に対しては、隣の指と骨折指をテープで巻き付けて固定するバディテーピングが頻用されます。これは、隣の指を添え木代わりにして安定させるだけでなく、固定期間中も隣の指の動きを利用して関節の拘縮を積極的に予防することを目的とします。
【ポイント】 手首や指の骨折は、固定期間が長引くほど、関節が固まってしまう(拘縮)リスクが高くなります。
当院では、医師が許可した範囲で、早期から関節を動かすことを推奨し、迅速な機能回復をサポートします。
2. 腓骨遠位端骨折(足首の外くるぶしの骨折)
🩺 概要と治療方針
腓骨遠位端骨折は、足首を捻挫した際に、強い力がかかって外くるぶし(外果)の先端部分が折れてしまう骨折です。
スポーツ中の怪我や、段差でのつまずきなど、日常生活でも比較的よく見られます。
この骨折で重要なのは、「ずれ(転位)」と足関節の安定性です。
- 転位がほとんどなく、足関節が安定している場合:保存療法が選択されます。
- 転位が大きい、または足関節が不安定な場合:手術療法が必要になることがあります。
🏥 当院での固定方法(保存療法の場合)
転位の少ない安定型骨折の場合、当院では主に以下の手順で固定を行います。
- 初期の固定(約4週間): 腫れが強い時期には、むくみ対策のため、調整がしやすいギプス副子(シーネ)で、膝下から足先までを固定します。この間、松葉杖を使用して患部に体重をかけない「免荷(めんか)」での生活となります。
- 後期の固定と機能訓練(約2〜4週間): 骨癒合の兆候が見られ、痛みが落ち着いてきたら、徐々に足関節の可動域訓練を開始します。この時期には、固定を維持しつつ、リハビリや日常生活での利便性を考慮し、着脱式の装具(例:足関節固定用のブレース)に切り替えることがあります。医師の指示のもと、徐々に体重をかける「部分荷重」を開始します。
【ポイント】 腓骨遠位端骨折の保存療法では、一般的に合計6週間程度の固定を目安としますが、早期にリハビリを開始することで、固定期間後の足関節の「拘縮(こうしゅく)」(関節が硬くなること)を防ぐことが非常に重要になります。
3. 足趾の骨折(足の指の骨折)
🩺 概要と治療方針
足の指(足趾)の骨折は、家具にぶつける、重い物を落とす、といった原因で起こりやすい骨折です。
足趾の骨折は、一般的に足の機能全体への影響が少ないため、ほとんどのケースで保存療法が選択されます。治療の基本は、骨折部の安定と、荷重時の痛みの軽減です。例外として、親指(第1趾)の骨折や、転位が大きい場合は、手術が必要になることもあります。
🏥 当院での固定方法
足趾の骨折の固定は、簡便で、かつ機能回復を妨げない方法が選ばれます。
- バディテーピングまたは副子固定: 転位が少ない骨折であれば、ほとんどの指は隣の指とテーピングで固定する(バディテーピング)だけで十分なことがほとんどです。必要に応じて、アルミ製の小さな副子やパッドを併用し、テーピングで固定します。
- 体重負荷のコントロール: 固定期間は3〜4週間程度が目安です。この間、体重をかけると痛みが増すため、靴の中に硬い中敷きを入れたり、足趾部分に荷重がかかりにくい特殊な靴(ダーコシューズ、サンダル)を使用したりして、患部への負担を軽減します。痛みが強い場合は、松葉杖による免荷や部分荷重を指示することもあります。
【ポイント】 足趾の骨折は、自己判断せず、専門医の診察を受け、適切な固定と荷重制限を行うことが大切です。
4. 腰椎・胸椎の圧迫骨折(背骨の骨折)
🩺 概要と治療方針
腰椎(ようつい)・胸椎(きょうつい)の圧迫骨折は、背骨(椎体)が潰れてしまう骨折です。最も一般的な原因は、骨粗しょう症によって骨が弱くなった高齢者の、尻もちや軽微な転倒です。
この骨折は、背中や腰に激しい痛みが生じ、特に体動時や立位、座位で増強します。治療の基本は、「安静」と「体幹の固定」による保存療法です。骨癒合に時間を要するため、一般的に2〜3ヶ月程度の長期にわたる固定と安静が必要になります。
当院での固定方法:ダーメンコルセットの作成
圧迫骨折の保存療法において、体幹をしっかりと固定するために当院で作成・使用するのが、「ダーメンコルセット」です。
▶ ダーメンコルセットとは
ダーメンコルセットは、胸椎や腰椎の圧迫骨折、またはその他の脊椎疾患の治療で汎用される、軟性体幹装具(ソフトコルセット)の一種です。
- 構造: 伸縮性の少ない丈夫な布地でできており、背中側には体幹の動きを制限するための金属やプラスチック製の支柱(ステー)が内蔵されています。
- 固定力と役割: ダーメンコルセットは、装着することで腹圧(お腹の中の圧力)を高めます。この高まった腹圧が、背骨(脊椎)にかかる上からの体重圧を軽減し、潰れた椎体への負担を減らす役割を果たします。
- 利便性: 硬性コルセットに比べて、軽量で通気性が良く、装着感が比較的ソフトであるため、長期間の装着が必要な患者さまの負担を軽減します。また、着脱が容易であるため、リハビリテーションへの移行もしやすいというメリットもあります。
- 当院での作成: 当院では、骨折の部位、患者さまの体型、症状に応じて、適切なサイズのダーメンコルセットを採寸し、提携の義肢装具士と連携して作成しています。医師の指示のもと、原則として起き上がっている時間(臥位時以外)は常に装着していただきます。
【ポイント】 圧迫骨折の治療では、ダーメンコルセットを適切に装着し、安静を保つことが非常に重要です。自己判断で外したり、無理な体勢をとったりすることは、変形が悪化する原因となります。
3. まとめ:堀の内整形外科内科クリニックでの骨折治療
骨折の治療は、単に骨をくっつけるだけでなく、受傷前の生活機能を取り戻すことを最終目標としています。
そのためには、適切な固定による骨の安定化と、固定期間後の速やかなリハビリテーションが欠かせません。
当院では、医師、理学療法士、看護師が連携し、以下のような体制で皆さまの治療にあたっています。
- 正確な診断: レントゲン機器やを用いて、骨折の型や周囲の軟部組織損傷を正確に評価します。
- 最適な固定の選択: 骨折の特性と患者さまの生活背景を考慮し、ギプス、シーネ、装具(ダーメンコルセット含む)の中から最適な固定方法を提案し、丁寧に作成・装着指導を行います。
- 早期のリハビリテーション: 固定期間中から、可能な範囲で固定部位以外の関節運動や筋力訓練を開始し、固定除去後は専門的なリハビリで、スムーズな機能回復をサポートします。
足首、手、背骨など、どの部位の骨折であっても、不安や疑問を抱えたまま治療を進める必要はありません。
骨折の診断を受けられた方、また、転倒や怪我で「もしかしたら骨折かも」と不安に思われている方は、さいたま市大宮区の堀の内整形外科内科クリニックまで、いつでもご相談ください。
皆さまの早期回復を、スタッフ一同、全力でサポートさせていただきます。

